--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2014.11.24

ぷよぷよ小説・第十話

お待たせしました、ぷよぷよ連載小説第十話です!

アリアの過去を目の当たりにしたアルルは、ついに行動を起こします。
はたしてそれがどんな結末につながるのか?この世界はどうなるのか?

割と今回も超展開+内容詰め込みすぎなお話です。


第一話【夢の中での、再会】

http://araaranooniwa.blog.fc2.com/blog-entry-95.html

第二話【雨音と、羽音】

http://araaranooniwa.blog.fc2.com/blog-entry-109.html

第三話【異世界からの、来訪者】

http://araaranooniwa.blog.fc2.com/blog-entry-117.html

第四話【音が降る夜の、決意】

http://araaranooniwa.blog.fc2.com/blog-entry-126.html

第五話【邪なる聖者との、約束】

http://araaranooniwa.blog.fc2.com/blog-entry-141.html

第六話【銀色の、支配者】

http://araaranooniwa.blog.fc2.com/blog-entry-149.html

第七話【支配者からの、難問】

http://araaranooniwa.blog.fc2.com/blog-entry-165.html

第八話【硝子瓶の中の、操り人形】

http://araaranooniwa.blog.fc2.com/blog-entry-174.html

第九話【彼女が、眠りから醒めるまでは】

http://araaranooniwa.blog.fc2.com/blog-entry-179.html


それでは、追記よりお楽しみください!











【宙の庭の中での、決闘】










長い長い夢から醒めた。そんな気分だ。

ふとボクが瞬きをすると、その長い長い夢の世界からは解放されていて、
目の前には古ぼけた石碑、眼下には鮮やかな若草色をした草原が広がっている。

耳元をそよ風が通り抜けてくのを感じながら、ボクはもう一回瞬きをした。
自分が夢から醒めたことを確認するために。

「エコロさん!今のって…」

聞かなくてもわかってた。

今のは、アリアの記憶。夢魔が夢魔になるまでの、ほんの些細な少女人形としての記憶。
そして、アリアがどうして今もなお夢魔として生きているかという理由。

そして、この石碑に書かれている文字はおそらく、夢魔たちが使っていた言語。
だからボクらは読めるはずもない…だけど。

「ボクがちょっと特殊な魔法を使って、此処に書いてあることをみんなの脳内に転送したんだ」

絶妙のタイミングで、エコロさんが語り始める。

「これはアリアと、もう一人の少女の記憶さ。どうしてここにこんな石碑があるかというのはね…

あくまでこれは推測だけど、彼女は時々ここに来ていたんじゃないかな。
彼女がまだ悪魔の頃、この国の人々から蔑まれて絶望の淵に立ちつくした時に
大切な友達との約束を思い出すために…とかね。

もっとも、今はその役割は僕が担ってるわけだから彼女もここに訪れることはないだろうけど」

エコロさんはそう言って少し微笑んだ。
その微笑みの意味は、今のボクには分からなかった。

「…ここは、わざわざ大切な友達を眠らせてまで作り上げた場所だったのか…」

サタンさんがふと呟いた。続いてルルーさんも。

「でも、この世界の均衛が崩れたら彼女も目覚めてしまうんでしょう?」

そう。アリアはエリザに『この世界の均衛が崩れるまで眠りにつかせる魔法』をかけた。
そしてボクらが行動することによってこの世界の均衛が崩れようとしている。

ボクらがこの世界の真実を突き止めて…そう、突き止めて。

その後は、ボクはどうすればいいの?

この世界の主を担うアリアを殺すの?そうしたら世界の均衛も崩れるだろうし、
この『第13並行軸』だってなくなるはず。だけど、本当にそれでいいのかな…?

誰かを殺める代りに誰かが醒める夢、幻。そうじゃなくて、
誰も死ぬことのない夢はないのだろうか…?

ちょっと暗い雰囲気になったのを見据えてか、エコロさんが、

「さ!帰ろうか―――――」

そう言って再び山の上を見上げた、その時。

…ぐぎゅるるるるるるぅ。

誰かのお腹が鳴る音でエコロさんはずっこけ、肩を強張らせていたサタンさんとルルーさんも
なんだか一気に脱力モード。

そしてボクは…というか、ボクがこの間抜けなお腹の音の原因だった。

気がつけば、太陽はボクらの真上に上っている。
つまりもう―――とっくにお昼の時間は過ぎてるわけだ!

ボクだって今日は遅めの朝ごはんだったけど、それでも流石に、お腹空いちゃったなぁ…。

「まったく…仕方がないな。帰って行ったん昼食を取ろう。いいよな?エコロ」

「うん、もちろんだよ~」

サタンさんが肩をすくめ、エコロさんは満面の笑みを見せた。
そしてそこから更に、ルルーさんがとどめの一言。

「そんなにぐーぐーおなかを鳴らせてもらっちゃ、こっちだって堪ったもんじゃないわよっ」

「ぅぐぅっ!」

ルルーさんの強気な発言。痛いところを突かれてしまった。
そんな訳でボクは反論する間もなく、再びエコロさんの家に行くことになった。

…ホントは、もう一刻も早くアリアの場所へ行きたいぐらいだったけど、
いや、一旦家に帰る原因はボクのせいなんだ…よね。

ボクはこれほど、自分のお腹が憎らしいと思ったことはないと思う。多分。



「ごちそうさまー!」

再びエコロさんの家。すっっっかりお腹が空いてたボクは昼食をたいらげた。
今日最初にやってきた時とは全く別のお部屋みたいに元通りになってるお部屋を見て、ボクは安心する。

毒はあとかたもなく無くなったとはいえ、まさか腐食した木も元通りになるなんて…!
ボクはさっきまでボロボロだったお部屋のテーブルを見つめて、改めて驚いた。

今日御馳走になったお昼ごはんは、カリッと焼いたハムとシャキシャキと瑞々しい
レタスやキュウリがたっぷりと挟まったサンドウィッチ!

お腹がすいていた、というのもあるけれどとっても美味しくて。
気付けば大きなお皿にたくさん作ってあったのを半分くらい平らげちゃったくらいだ。
(あ、ボクが食い意地はってるだけかも…)


「さ、それじゃそろそろ行ってくるよ」

ある程度片付けを手伝った後、ボクはいよいよ出発する為に
エコロさんのうちの前の門に立っている。

そこに立っているのは、僕だけじゃない。もう一人。

「…本当についてきちゃっていいの?エコロさん」

そう、エコロさんだ。

こうやって二人で同じ場所に立ってると…エコロさんって案外背が大きいんだな、と感じる。
ボクの頭一つ分とあとちょっと高いぐらいで、並んでみるとその違いもすぐ分かった。

「大丈夫、大丈夫!それに、君があのアリアの空間にたどり着くまでのエスコートをしてあげるだけだしね」

…それと、エコロさんは最初に会った時よりなんだか明るくなった、ような気がする。
なんだか笑顔を見せる時も多くなってきたし。そして…

「おーい!おじさま!ルルーさーん!」

彼が手を振った相手―――サタンさんとルルーさんもなんだかちょっと変わった、ような。
サタンさんはあまり違いは見えなかったけど、ルルーさんは絶対変わった。

「エコロっ!あんまり急かすのもほどほどにしなさいっ!私達は
アンタ達を送ってあげるだけなんですのよ!」

…明らかに気が強くなった。

初対面のどこかよそよそしい雰囲気はもうどこかに飛んでっちゃって、
今―――今。そう、丁度今はエコロさんを追いかけまわして―――。

「…って、何やってるの!二人ともっ!!」

思わず大きな声を出してしまった。二人ともボクの方を見て目をぱちくりさせてる。
…そんなに大きな声出してたかな?ボク…。

もしかしたら、これはもうこの世界が崩れかけてる証拠なのかもしれない。
アリアによって構築されたボク達の人格が崩れていってる。

それはすなわち、この世界が徐々に欠けていってるっていうこと。
そしてこの世界の均衛が失われたときにエリザが再び現れる…。

…!…ということはだよ、もしかしたらアリアを殺して世界の均衛を崩すよりも
もっと平和に解決できるかもしれない!

っていうか、もうこの世界の均衛の崩壊は、既に始まっているのかも…!

「全く、騒がしいな。もう少し静かに別れはできないのか」

ふと考え事をしていた顔を上げると。
家のドアの前でずっとぼくらの様子を見ていたサタンさんは、腕を組んで呆れ顔だ。

別れ。

…そう。ボクもそろそろ出発の時。これからボクは、アリアの所へ行くんだよね。
大切な夢魔の少女を守ろうとした、ちいさなちいさなお人形の元へ。

ボクは、さっきエコロさんにアリアの過去を見せてもらってやっとわかった。
アリアが求めているもの。そして、この世界の結末を。

アリアが求めているもの…それは即ち、最初にアリアと対峙した時に投げかけられたなぞなぞの答え。

『今にも崩れ落ちそうなほど脆いのに、鉛のように重苦しくもなり虹色にも輝けるもの』

その答えが見つかった。大切な友達の身代わりとして孤独を生きてきた彼女は、
心の中で思っていた一番欲しいものをボクらに問いかけていたのだ。

ボクらはこれに答えに行かなければいけない。
そして当の本人に気付かせてあげなければいけない。

彼女が心の奥で求めるものを教えれば、きっとこの世界の均衛も崩れる。
彼女はきっと今、この世界を守り続けることに限界を感じていると思う。

ボクらが次々と真実を解き明かすごとに。きっとこの世界の限界を一番感じているのは
アリア自身なのだ、きっと。

支配者だから。
支配者だからこそ。

「それじゃ、サタンさん、ルルーさん!」

その彼女の心を解きほぐしてあげたい。そして笑顔で大事な友達と
再会をしてほしい。だから。

「――――いってきます!」

ボクは、彼女に逢いに行く。



エコロさん曰く、アリアの拠点はボクが最初にあった場所とは違うらしい。

きっと彼女自身もボクが近々自分の拠点に来ることはわかっていて、
心の準備をするために、自分にとって居心地のいい場所に陣をとっている―――
というのがエコロさんの言い分だ。

この世界の崩壊を見届けるために。そして友達と再会を果たす為に。
再会ができるかどうかは―――ボクがこっそり考えてる作戦が成功すればにかかってる、けど。

でもボクは思う。そうやってエリザと再会したところでその後彼女はどうなるんだろうか。
エリザにまたこの世界を任せるのかな?

でもエコロさんは違法に作られたこの『第13並行世界』の主を裁くためにやってきた。
ということは、結局二人が再会を果たせても最後には…

叛逆者の夢魔とその人形は、殺されてしまうのだろうか。

この世界の理に逆らって…人々を救うという職務を遺棄した罰として。
殺されはしなくとも…結局二人は自分の居場所を無くしてしまうの?

そんなの…そんなのボクは絶対に嫌だ!
ボクは、二人とも笑顔で迎えられる結末が見たい!

ボクは、横に並んで歩くエコロさんの横顔を見上げた。
彼は今、何を考えてるのだろう。

時空の旅人といわれる立場として、叛逆者を始末することかもしれない。
はたまた、ボクと同じで平和に解決したいと思っている、のかもしれない。

ボクには今の彼の心理がわからなかった。
そして、あの石碑の前で向けられた微笑みをボクは再び思い出す。


しばらく歩いて、山の中腹辺りで僕らは立ち止った。

辺りをを緑の木々に囲まれて、崖側には小さな花々がぽつぽつと咲いている。
そして斜面側とは違う…外側を見ると、木々の隙間から青空が見え隠れしてる。

きらきらと優しい木漏れ日が緑の間からもれだして、眩しい。
そよ風が吹くたびに木のカーテンがそよそよと揺れて一層太陽も輝いて見えた。

「アルルちゃん、ちょっとあそこを見て」

「…あそこ?」

エコロさんが指さしている方向を見ると。ボクらが歩く山道のずっと先の方に
なんだか標識みたいなものがあった。

「アレはなんだろう、エコロさん?」

ボクは首をかしげる…だけどちょっと考えてすぐに気付いた。
そして元々何の標識か知っているように、にこにこしてるエコロさんと顔を見合わせ、

「アリアのいる場所!」

声をそろえた。

よおし、それだったらいちいち歩いてる場合じゃないよねっ。
そう思ってボクは一気に山道を駆け上がる。後ろから「待って、アルルちゃん!」
って言うエコロさんの声も聞こえるけど…まぁいいや!

走ってその標識の目の前にたどり着いた。
標識には―――あの石碑に書かれていたものと同じような文字。

これは夢魔の者が使っている文字…とすれば、おそらくここにアリアがいるのは確定だろう。

そしてその標識の横には、大きくぽっかりと空いた洞窟。
中に何があるのか、ほんのちょっと先すらも既に深い闇に遮られて見えないままだ。

でも奥の方に目を凝らすとちらちらと何かが瞬いて見えるのか確認できる。
それ以外は…本当に何も見えない。

明るい山の景観と照らし合わせるとよりその洞窟の暗さが際立って見えた。

でもついに。
やっとたどり着いたのだ。
きっとこの洞窟の奥にアリアがいるんだ…なんだか緊張する。

「あ、アルルちゃん!いくらなんでも早いよ…!」

息を切らしてエコロさんも駆けてくる。
…いくらなんでも、ボクもちょっと息切れしてるけど。

その呼吸を落ち着かせるように。そして同時にはやる心を抑えるために。
ボクは深呼吸を一つした。

「アルルちゃん、此処からは一人で行くんだよ」

「…うん」

エコロさんがボクの肩にぽん、と手を置く。その時のエコロは素手だったけど、
もう悪魔の力を操れるようになった彼が触れてもボクには何も起こらない。

「きっと君には君の考えがあるんだと思うよ、アルルちゃん。

だから僕はそれに任せる。ボクはあくまで『時空の旅人』。
実態がないあやふやな存在といえど時空の理にかかわる立ち位置だからね。

それに時空の境界線を守る第一人者である『時空の番人』に仕事を任されてる以上、
僕は彼女を止めることしかできないんだ。

でも僕がその行為を止めたことでどうなる?彼女はそうなれば自分の世界を崩すしかない。
そしてこの世界の均衛が崩れれば恐らく大元の夢魔も現れるだろう。

でも、そこからの処理はボクはできない。これはあくまで頼まれごとであって、
その頼まれごとは『新しい時空を創った者』を止める。ただそれだけ。

そこから後は『番人』の仕事だ。きっと彼は、叛逆者を処刑するだろう…何らかの形で。
時空の理に逆らう者は要らない。きっと彼女達は誰も干渉できない時空のはざまの奥底へ沈められる。

そうしてしまえば、僕や番人でさえも干渉することができない。
彼女達は、前も後ろも漆黒に包まれた空間で永遠に生き続けることになる。

それが叛逆者の末路であり応酬なんだ。
…そんなの嫌だよね、アルルちゃん?」

「…っ、そんなのもちろんだよ!ボクはアリアたちにそんな目に遭ってほしくない!

エリザは皆に裏切られたのに絶望して、アリアはその大切な友達を守るために
生きているだけなのに、なんであの子たちがそんな目に遭わなくちゃいけないの!

ボクは、せめて彼女達が笑顔でいられるような結末にしたいんだッ!!」

思わず一気にまくし立てちゃったので、一旦そこで息をつく。
勢いよく言葉を返されたエコロさんは、目をぱちぱちさせて驚き顔だ。

でも、また彼は笑顔を見せてくれる。
そして今までボクの肩に置いていたその手でボクの背中をとん、と押した。

「うふふ、そっちの方がずーっと君らしいよ、アルルちゃん!」

「…ボク、らしい?」

ちょっと誉められてるのかけなされてるのか、よくわからなかったけど…
エコロさんはこの世界に来る前のボクを知っている、多分。

そして今のボクがだんだんと本来であるボクの人格に戻ってきてるんだ。
だから元のボクをしってるエコロさんが「ボクらしい」って言ってくれてるんだ。

エコロさんに背中を向けたボクだけど、もう一度深く呼吸をしてエコロさんの方へ振り向いた。
この世界の悪魔として彼と出会ったあの日の事を思い出しながら。

「いってくるね、エコロ」

思わず呼び捨てで呼ばれたエコロは一瞬目を丸くしたけど、
ボクに手を振ってくれて、笑ってくれた。

「…行ってらっしゃい」


洞窟の中に一歩踏み出すと、ひんやりとした空気とどうしようもない不安が押し寄せてきた。
それでもボクは、歩みを恐る恐る、でも確実に進める。

振り向くと入口の光は既に掻き消されていて、
辺りはいよいよ真っ暗に。前も後ろの上の下も、黒、黒、黒。
自分でどこを歩いてるのか分からなくなってくるのが、余計に不安を煽る。

だけど、しばらく歩いた時。

急にボクの両サイドに灯りがついた。
紫と淡いピンクの蝋燭の光が交互についていって、長い長い廊下を映し出す。

どうやらボクが今まで歩いていたのは大きな大きな広間だったみたい。
床には不思議は幾何学模様が刻まれてあって、壁一面を蝋燭がぐるりと取り囲んでいる。

でもその先に続いているのは…細長い廊下だ。
そこからは蝋燭の光はあるけど壁や床が煉瓦作りになっていて
ここの広間よりなんだか荒々しさを感じる。

ボクは勇気を振り絞ってその廊下へ足を踏み出した。
誰もいない廊下を、ボクの足音がこだまする。

ここまできたら、今更後戻りも出来ないしね。それにボクはアリアに会うって決めたんだから!
そして、きっと王城のラグナス王や司祭さんだってボクの後押しをしてくれた。
ルルーさんやサタンさん、それにエコロだって!

…そういえば、アミティたち、どうしてるかなぁ。
ボクが魔導学校を出たあの日から合うどころか、もう声を聞いていない。

きっとみんな心配してるだろうなぁ…ボクだって皆に会いたいよ。
アリアに会って、決着がついたときにはまたみんなに会えるかな。

いくらアリアの作りものとはいえ、アミティたちはずっと過ごしてきた大切な友達だもん。
今までの事、そして迷惑をかけちゃったこともちゃんと謝ってお別れがしたいよ。

そしたらこの世界ともお別れだ。なんだか寂しいというか、怖い。
おかしいな、それを覚悟してボクは『この世界の謎を解き明かす』と決意したはずなのに…。

やっぱりそこら辺が甘いんだなぁ、ボクって。
もっとちゃんと…自分で決めたことは自分でちゃんと果たさなくちゃ、だよね!

そんな事を考えてるうちに、いつの間にかボクは大きな扉の前に立っていた。

その大きな金属製のドアは、隅々まで彫刻が施されている。
そしていたるところに輝く宝石が埋め込まれていて、金のふち飾りまで付いていて。

きっとこの扉の向こう側に、アリアがいるんだ。
ボクは一瞬怖さでためらったけど…目をぎゅっ!とつむって思いっきり力を込めて扉をあける。

ギギギイィィィ…。

重々しく、扉が開く音。そーっと、そーっとボクが瞼を開けると。

「…あら、よく来たわね。いらっしゃい」

アリアが立っていた。

ドアを開けた先の部屋は、一面ガラス張りになっていた。
そしてそのガラスの向こう側には星がきらめく宇宙が映し出されている。

ボクが足を踏み出す度に足元からは金平糖みたいな星屑が飛び散って、消える。
そして、辺りには部屋を照らすものは何もないはずなのにどこか明るくて。

宙にはなんだか不思議な靄みたいなものが漂っていて、
どこからかきらきらとした花びらが舞い踊って吹きぬけていく。

奥行きがどこまでもどこまでもありそうなとても広い大広間で、
ボクとアリアは二人きり、対峙した。

「………アリア、」

ボクは、思い切って口を開いた。
アリアはうっすらと顔に笑みを浮かべて腕を組んでいる。

「ボクは、自分のやるべきことを見つけたよ」

ボクがいうと、アリアは今度ははっきりとほほ笑んだ。

「あら、そう。良かったじゃない。それで、どうするの?

亜麻色の魔導師。貴方はこの世界の支配者である私にたどり着いた。
貴方は、世界の真相を知りたいと思い、探って、ついに今再び私の元にやってきた。

私は前に言ったはずよ、貴方には為すべき使命があると…
貴方に真相を探らせるきっかけを出したのは私。

だけどその僅かな情報だけで城の者や悪魔と出会い、私のところまで行き着いた。
正直、あなたにあまり見込みはなかったわ…そう、最初こそ」

「…?最初こそ?」

「でも今は変わったわ。亜麻色の魔導師―――いえ、アルル」

アリアは組んでいた腕をほどき、その右手で髪をかきあげる。

「貴方は私が思っていた以上の所まで突き詰められた。現に今、この世界は崩壊しつつあるの。
勘のいい貴方なら気付いているでしょうね…貴方達の人格が、徐々に変わり始めている事を。

それは即ち、この世界の主である私の支配が解け始めているということ。
だからアルル、貴方だって自分が思っている以上に溌剌な性格になっているはず。

意外とね、周りが気付くものなのよ。そういうの」

アリアに指を差されて、思わずボクは言葉に詰まる。
そういえば、エコロだけじゃなくてキキーモラさんもそんな事を言ってたような…。

待って、それって、ボクが初めにアリアに会う前からもうアリアの支配は解けかけてたっていう事…?
ボクが考えてると、アリアがこほん、と咳払いを一つ。

「さて、話を本題に戻しましょう。

アルル。貴方はこの世界をどうするつもり?もうすでに崩れかけているこの世界を。
この世界の均衛はもう崩壊の時を迎えつつある。

きっと…そう、そうしたら私はこの世界を守らなくてもいい事になる。
でもきっと周りがそれを許さないでしょうね。

私は叛逆者。永遠に守られていたはずの理を破って、この世界に新たなる並行世界を作ってしまった。
どんな事情があったとしても、その事実に揺らぎはないわ―――

叛逆者は裁かれなければいけない。私は…そうね。
きっと時空の狭間に放り出されるでしょう。

さぁ、どうするのか決めなさいアルル。この場でこの世界を完全に崩し、
罪人である私を時空の果てに消し去るか…。

あなたがもし恐ろしいのなら、此処で身を引けばいいわ。
そしてあなたがこの世界についてまた疑いをもたなくなる時、再び世界は平穏を取り戻すでしょう。

この世界を壊す?それとも手を引く?どちらにするか決めなさ―――」

「っ、どっちも嫌だッ!!!」

思わずボクは叫んだ。ボクの金切り声にも近い声は、広間に深く反響した。
ふぶく花びらがより激しい物になる。でもボクは気にしない。

だって、こうでもしないとアリアが自分で傷ついていくのを眺めているだけになってしまうから。
彼女が出した選択肢。それはどちらを選んでも結末はおなじ。

「ボクは、君に笑顔で終わりを迎えてほしいんだ!
ボクはね、君の昔の事を知ってるんだ。君は大切な友達を眠らせてまでこの世界を守り続けた。」

孤独に耐えながら。

「そこまで守り続けていた世界を君は自ら壊してしまうの?
君は大切な友達をおいてけぼりにして、一人だけ裁かれるの?」

それまでずっと孤独だったのに、どうしてまだ一人を選ぶの?

「でもここで手を引いても、きっと君はダメになっちゃう。ボクにはわかるよ、
一人で頑張ってきた君の気持ち!そして大切な友達に対する想いだって!!」

きっとここで手をひいたら、それこそアリアは近いうちに孤独に打ちひしがれるだろう。

「君はボクらの支配が解け始めているといった…それはボク達が『真実を解き明かしたから』じゃない!
君自身が『真実を解き明かしてほしい』と願っているから!

…もうきっと君は孤独の痛みでボロボロだよ。
もうこんな世界を守る事なんてやめちゃいたいって思ってるはずだよ。
ボクはわかる。だからさアリア、

君が君の大切な友達に会えるように手助けしてあげる!

結局この世界は崩れるかもしれない。でもボクがなんとか話してみるよ。
もしかしたら君が処罰を受けない終わり方だってあるかもしれないじゃないか!

誰かが犠牲になる悪夢なんていらないんだ。
皆が笑顔で朝を迎えられる。それが夢なんだから!」

人々に笑顔を届けてあげる、それが君の友達の役目だった『夢魔』の仕事だったんでしょ…?

「…………さい」

しばらくして振り絞るように聞こえたアリアの声。
最初は聞き取りつらかった。だけど次は、彼女は叫んだ。

「黙りなさいッッッ!!!!!!」

思わず、その気迫にのけ反ってしまう。
アリアは怒りの表情をこれでもかというほど露わにしていた。

「貴方に、私の気持ちの何がわかるものですか!!
貴方はそうやって…私の支配者としての気持ちを嘲り踏みにじりたいのかしら!?

前言を撤回するわ…今の貴方にはこの世界を崩す資格なんて、ないッッ!!!」

「!!…どうして、アリア…!??」

辺りを取り巻く風がより一層激しい物となり、吹き付ける花びらも痛いほどになってくる。
その中で、ボクをにらむアリアの黄金の目は一層輝いて見えた。

アリアはどうしてこんなにも怒ってるの?友達―――エリザに会いたくないの?
まだそうとは言ってないけど、だってまるで…会いたくない、とでもいうように。

その目には涙が浮かんでいたから。

ふとアリアが、ボクに向かって両手のひらを広げる。
なんだか危ない―――そう思ったボクは、とっさにその手のひらがさす方向から逃げた。

刹那、ボクの頭上を鋭い槍が飛んでいく。ボクはしゃがみこんで平気だったけど、
今は立ち止ってる場合じゃない。しゃがんだ体制のまま一気に前転して、
そこから前傾姿勢で駆けだした。

「貴方はもはやここから引く権利もない…私が愚かだった!
貴方にこの世界の真実を教えたのが誤っていたのよ!

今は貴方を―――殺すことが最優先だわ。
『あの子』に同情の念などを持った事を後悔しなさい!!

そして支配者である私に、叛逆者である私に…っ、
手を差し伸べた自分の愚かさを、思い知るのよッッ!!!」

ひゅん、ひゅん、ひゅんっ!

真っ黒な槍が、天井からボクめがけて飛んでくる。
それらを本当にすれすれでよけながら、ボクはアリアとの間合いを詰めていく。

ひゅぅん!と、ボクの肩を槍がかする。
鋭いソレは、ボクの肩にかすり傷を負わせてどこかに飛んで行った。

このままじゃキリがない。何か対抗する方法を考えないと…
せめて時間稼ぎができるための何か!

そうだ、あの時、シェゾとウィッチさんと共闘した時に発動できた魔法…
『ジュゲム』。それさえもう一度できれば、時間を稼げるかもしれない!

成功するかしないかなんて考えてる場合じゃないよね。
ボクに向かって飛んでくる槍は、そのまま床や壁に刺さって広間を壊していく。

もう既に時々バランスを崩してよろけちゃうくらいだ…。
おまけにアリアは、逃げるようにボクからどんどん離れていくし。

一か八かだ、ちょっとでも時間を稼いで
その間にどうやってアリアに追いつくか考えないと!

もう一度、体中の魔力をかき集めて、一つにして…再び、魔力がみなぎるあの感覚。
体中から魔力が集まって、ボクの手の先に集中してるのを感じる。

今ならいけるかもしれない…!成功して、お願い!

「……ジュゲムッ!!」

両手を頭上に掲げて、その呪文を唱える。
瞬間、爆風ととんでもない熱気が辺りを包んだ。

「…っ!」

広間のガラスが一気に割れる音。不意に床のガラスが無くなるのを感じたボクは、とっさに近くの壁際に逃げた。
数秒たってもその爆発によって巻き起こった煙は消えるどころか薄れる事すらない。

でも、ジュゲムは再び成功した。この魔法はかなりの魔力を使うみたいで、
ボクは思わずその場にへたり込んだ。息も絶え絶えだ。よし、ちょっとだけ息を整えよう。

どっちにしろこの濃い煙の中で行動なんてできない。
もうちょっと煙が薄くなってから、相手の様子を見あって―――。

…ドスッ!!

鈍い音がした。何かが何かに刺さる、生理的に嫌な音。
一瞬何が起きたのか、わからなかった。

一瞬朦朧とした感覚に包まれたボクは、自分の腹部を見てすぐに
その音の正体に気付くことになる。

漆黒の槍が煙の中を割いて、ボクの腹部を正面から貫いていた。

「っ…!?がはっ!!」

口の中が一気に鉄の味に染まる。口から何かが垂れてくる感覚が、
痛いほどわかった。腕すらも思うように動かせない。

「ふふ、チェックメイトね」

まだ濃い爆煙の中を歩いてきたのは…アリア。
その手には、ボクに刺さっているものとは違う槍が握られていて。

「惜しかったわね、アルル。私の選択肢からどちらか一つを選んでいれば、
こんなことにもならなかったのに」

そう言ってアリアは、手にもつ槍をボクの喉元にあてる。
反射的にボクは顔を上にあげた。下目づかいにアリアを見ると、その目にはまだ怒りの色が渦巻いている。

「愚か者には用はない。さようなら」

そういってアリアは、その槍でボクの喉元を突き刺そうと槍を構えた。
でもボクは何もできない。身体を押さえる杭のように僕の体に刺さったそれは抜けないのだから。

それに万が一抜けたとしても、ボクには脱出なんて不可能だ。
もうすでに体はマヒして動けない…。痛みと余りの出血で、脳がぐらぐらと回っている。

もう何かを考えるだけで精いっぱいだ…。
ボクは…ここで終わりなの?せっかくここまで来たのに…。

皆の期待…背負ってるのに…。ボクにはもうどうする事も出来ないなんて…。
朦朧とした意識の中、かつての日々が鮮明に思い出される。

魔導学校で皆と交わした楽しいおしゃべり、さりげない挨拶。
王城で体験した驚くべき数々の体験、にぎやかに過ごした宴の夜。
悪魔の家で誓った約束、ほんの僅かだけど一緒に笑いあえた時間。

この世界で過ごしたボクの記憶の全部が、走馬灯みたいに
ボクの脳内を巡り巡っている。

ボクは、皆に何もできなかった。あんなにも優しくしてくれた皆に
心配と迷惑と、過度な期待ばかりをかけてしまって…。

「…ごめんね…!皆…!」

ボクが歯を食いしばった。そしてついにアリアの槍が振りおろされて―――

―――ピカッ!!ドシュウウゥゥゥン!!!

突如、辺りを眩しい閃光が包みこんだ。その次に、ものすごい勢いの旋風が体を吹き抜ける。
その旋風に体が持ち上げられる感覚がした後、ボクは思わず閉じていた目を開けた。

その旋風により割れた床が不安定になりボクの体がぐい、と傾く。
そして倒れこんだボクを抱え込んで、支えてくれたのは。

「…お待たせ、アルル!」

赤い帽子に、外にはねた金髪、丸いエメラルドの瞳…。
元気な笑顔を浮かべる彼女は、まぎれもなく、アミティだった。











続く









はい、という訳でお待たせしました第10話!

今回は解説+ご飯ネタ+ちょっぴり戦闘シーンとやりたい事を一気に詰め合わせました。
おかげで文章量がいつもの比じゃありません…!

さてさて、アルルに突然の逆ギレをかました(爆)アリアさん、
彼女のその怒りの理由とは?それを探るためにアルル再び大奮闘!

サポートにやってきたアミティたちの活躍も交えつつなんだか賑やかになりそうな
ぷよぷよ小説第11話、年内には更新したいです!お楽しみにー。
この記事へのトラックバックURL
http://araaranooniwa.blog.fc2.com/tb.php/192-ce7504c6
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。