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2015.01.23

ぷよぷよ連載小説・十一話

どうも、ぷよぷよ小説第十一話です!

今回は色々メンバーが集合し始めたお話です。
いよいよクライマックス!という訳でまたまた若干長めです。

ちなみにアルルが今回いろんなところに駆けまわってます、
体力面とかそこはもう気にせずお願いします…(静かに爆ぜる)



本来金曜に上げるはずだったのにかなり大幅に遅れてしまったので、
投稿日時操作させていただいてます…申し訳ありません。






それでは、追記よりどうぞ!





















【歪な道を、駆ける少女】










「お待たせ、アルル!」

ボクはいつの間にか、アミティに抱きかかえられていた―――
とはいっても、ほとんどしょわれてる形だけれど。

「あ…アミティ!どうして…」

「アルル、詳しい事はあとでだよ!とにかく今は、」

そこでボクのすぐ横を漆黒の槍がかすめるけど、
すんでの所でこれを避け、ボクはアミティにしょわれて砕けたガラスの道を登っていく。

「逃げよう、アルル!」

床はとっても不安定で、踏みしめるたびに割れて崩れていってしまう。
でもアミティはただ歯を食いしばるだけで、ボクに心配をかけまいとガラスの床を無言で駆けあがっていく。

…アミティ、ボクとあってない数日間でなんだか頼もしくなったような?
ちょっと前までは、ドジで、元気で、明るくて…。

パッと見た時はわからなかったけど、今こうして近くにいるとよくわかる。
ボクに心配をかけてはいけない。そういう気持ちがアミティの横顔によく現れてる。

強張ってて、必死そうな顔。でもその瞳は、変わらず丸い大きなエメラルド。
どうしてだろう…この世界が崩れるにつれて、ボク達の性格だけじゃなくて
アリアに作られたアミティたちにも影響が及んでいるのかな?

そうじゃなくって、ただの自分の中の変化、という可能性もあるけれど―――。

なんとなーくモヤモヤしながら、鋭い槍をよけつつ進む。
そうして濃霧の中をしばらく進むと。

霧が突然晴れて、ガラスでできたような小さなトンネルが
星の瞬く宇宙に浮かんでいるのが見えてきた。

「…えぇいっ!」

トンネル付近の大きなガラスを踏みしめて、アミティはそこから一気にジャンプする。
ふわりと体が浮き上がる感触がした後、ボクはトンネルの中に転げ落ちた。

「うわ、わ、わ、わぁ…っ!?」

勢い余って、ボクはガラスの床に思いっきり放り出される。
横っ腹を思いっきり打ちつけたけど…ボクはまだ意識が朦朧としててそれどころじゃなかった。

頑張って体を仰向けにするとぼやける、視界にアミティとは違った人影が映し出される。
それも…一人じゃなくて、何人も。

「まったく、あなたは無茶しすぎ…なんだから!」

聞き覚えのある声にハッとした。
声の主は…金髪に赤いメイド服。キキーモラさんだ。

「…?!な、なんで…!?」

「私たちも~、います~よ~♪」

おっとりとした声がまた別の方向から聞こえる。
身体はあんまり動かしたくないので、せめてもと目を最大限にその方向に凝らすと。

するとそこには、白いワンピースを着てほほ笑むハーピーさん。黒い衣装に身を包んだフェーリさんに、
水を張った金の盥みたいな容器につかるセリリさんが。

「ほらほら、まだ体を起こさないで。今から傷を治してあげるから」

そう言って、キキーモラさんは「よいしょ」とボクのそばにしゃがみこむ。
続いて、フェーリさん、ハーピーさん、セリリさんも。(ボクが見える限り、セリリさんの盥は
ハーピーさんの腰に巻かれた紐で引っ張られているみたいだった)

「それじゃ、アルルはよろしくお願いします!」

姿こそボクの位置じゃ見えなかったけど、アミティが確かにそう言っているのが聞こえた。
そして再びガラスの床を踏む音と「えいっ!」というアミティの掛け声が聞こえて―――
それっきり、アミティの声は聞こえなくなった。

多分アミティは、このトンネルからジャンプして出て行ったのかなぁ、とは思うけど…。

「あの、キキーモラさん達は、どうしてここに…?」

ボクは、言葉を途切れさせながらもなんとか疑問を口にする。
するとキキーモラさんは、こほんと席払いをしてもう一度座りなおした。

「ちょっと話すと長くなるけど…いいかしら?」

薄ぼんやりした視界の中でも、キキーモラさんが真剣な顔つきをしてるのがよくわかった。
だからボクはゆっくり「うん」と、うなずいた。

懐からハーピーさんが小さなガラス瓶みたいなのを取り出して、セリリさんに渡す。
セリリさんは金の盥に入った水を片手で掬って、そのガラス瓶に注いでいるのが見えた。

「悪魔から、手紙が来たのよ」

キキーモラさんの言葉にボクは驚いた。
エコロ達から手紙…?一体どうして。

疑問を口にしようと思ったけど、とりあえずここはキキーモラさんの話を聞く事にした。

「今日のちょうどお昼すぎにね、手紙が伝書鳩で送られてきたのよ。
私達の国はほとんど外交もなかったし、そもそも伝書鳩なんていう手段からして
おかしいとは思ったの。

いったい何かしらと手紙を開けるとね、
悪魔の家に来い…って書いてあったの。差出人は書かれていなかったわ。

でもこの手紙には魔力が込められているらしくて―――そうシェゾさんとウィッチさんが言ってたわ―――
この魔力は悪魔の者だって二人とも断言していたの。

理由は聞いてもあまり教えてくれなかったけど、あの二人が言うんだから間違ってはいない。
そうおっしゃって、王様が直々に悪魔の下に会いに行ったのよ。

ただ、その時はシェゾさんとウィッチさんも一緒にね」

キキーモラさんがそこで一息つく。すると代りにフェーリさんが続きを語り始めた。
ボクが怪我をした腹部に、何か水滴が垂れるひやりとした感覚が刺す。

「そしてしばらくした後、王から連絡が来たのよ。
『今すぐ、司祭全員を連れて指示する場所に来い』と…。

アタシ達が向かうと、そこは悪魔の家だったの。
アタシ達を待ち受けていたのは、そこに住む悪魔と使い魔…

基、『時空の旅人』」とアナタと同じ所からやってきた人たちだったワ。

アタシ達はそこで、この世界を形作っている犯人の過去を話してもらったワ…
そして、時空の旅人が隠していた事もきれいさ・っ・ぱ・り・ね。

きっとアルルは今ごろ、一人で戦っている。でもやはり彼女が心配だ。
だから王城の人々と共にアルルの手助けをしてあげようと、彼は考えたのでしょうね」

「…そうだったんだ…」

エコロ…ボクのためにこんなことまで…。

お腹に滴る水の感触は、間隔を短くしていく。
さっきから垂らされている、この液体はなんなんだろう?

きっと何かの薬だろう―――だんだん、視界もはっきりしてきたし、
ちゃんと何かを考える事も出来るようになってきた。

ハーピーさんがひょっこりと顔をだし、微笑む。

「そして~、私達と一緒に魔導学校の方々もくることになったんですわ~。
先生の方は勿論、あなたのお友達も一緒よ~。」

ハーピーさんは、そこで一瞬顔を曇らせた…けどまたボクに優しい笑顔を見せてくれる。
なんで彼女が一瞬笑顔を無くしたのか。それはボクにでもわかった。

きっとこの世界が崩壊してしまえば、皆消えてしまう。
別の空間から飛ばされてきたボクら以外の皆は…きっとこの世界が崩れるときに
消え去ってしまうだろう。

だから最後のお別れに―――本当に、悲しいやり方だけど―――
ボク達みんなで顔を合わせてほしかったんだろう。

そして王都側から魔導学校側に連絡をし、(きっとその際に世界の真実も伝え)
皆で一緒にここまでやってきたのだろう。

そうやって、今までも皆はとってもボクを気遣ってくれている。優しくしてくれている。
とっても嬉しいし、励みにももちろんなるよ。でも。

「…でもボク、」

思わず本音を漏らしてしまう。ここまでいろんな人に助けてもらって、
怪我もして、迷惑かけて…。気が滅入っていたのかもしれない。

「皆のために何もできなかった…。

ボクがこの世界の真実を突きとめますって言ったばっかりに、
皆をこんな事に巻き込んで、いろんな苦労までさせちゃって…。

結局ボクは、何一つ自分でできていないじゃないか」

そう。ボクが雨の中、道で倒れていたのを助けてもらわなければ
ボクはあのまま死んでいたかもしれない。

悪魔に会いに行くのだって、アリアに会うのだって、ここまでやってくるのだって…。
ボクは誰かしらに助けてもらっているんだもん。

「誰かに優しくしてもらうたびに、ボクの心には申し訳ないという気持ちがたまってく。
なにも出来ない自分が情けなくなってくる。

なのにどうして?どうして皆ボクに優しくしてくれるのかな?
…なんて思ったりもしちゃって、それで、ボクったら自惚れてるなぁ、とか思っちゃって…」

きっと皆は結果がほしいんだ。ボクの言葉を信じ、
ボクに任せてくれるんだよ。それなのにいつもどこかで躓いちゃって。

でもその度に皆は優しくしてくれる。あったかい言葉をかけてくれる。
そう、今この瞬間だってそうだ。

「本当に、こんなところまで付き合わせちゃって…ごめんね」

…おかしいな。ハッキリしていたはずの視界がまたぼやけてきたよ。
目頭が熱くなって…ボク…ボクは…。

―――――ぱしん!

ほっぺたを何かでたたかれた。びっくりして、目に浮かんでいた涙を思わず手の甲でぬぐった。
ボクの前では、セリリさんがむくれていた。
(それに引っ張られて、ハーピーさんも一緒にいたけど)

「アルルさん…!そ、そんなこと言わないでほしいです!」

「…セリリ…」

初めて会った時に見せていたおどおどした雰囲気とは違った、
ボクを見つめるその強い視線に思わずびっくりする。

「そうですわ~、アルルさん~。

あなたがその気持ちを持って行動してくださったから、
私たちは今ここにいるのですよ~♪」

「アルル、あなたのその世界を変えるという意思がなかったのなら…
今でもまだ、この世界の主の手のひらで転がされるままだったかもし・れ・な・い・ワ…

皆アナタに感謝しているのヨ、だから、自信を持ちなさい」

ハーピーさんも、ボクの右手を優しく握ってくれた。
フェーリさんも(珍しく?)微笑みかけてくれる。

…あったかかった。本当に。

…そうだよね、ボクはここまでやってきたんだ!
確かにボクは皆に手伝ってもらった。皆に迷惑をかけた。

でも、確実にボクはこの世界の事実を解き明かしていってるんだ。
確実に、ボクは皆を導いてきてるんだ!

その事実も変わらない。だから、ボクもちょっとは自信を持ったっていいんだよね!

ここでボクが挫けちゃったらどうするの?
この世界の中心で―――きっと今も苦しんでるアリアは誰が助けるの?

ボクはアリアに出されたあの問題の答えもわかった。
だからもう一回、ボクが彼女に会いに行かなくちゃいけないんだ。

「…よっ、と!」

気合を入れて、思いきって起き上がる。
すると、なんとあの腹部の痛みは全然感じなかったのだ。

ハッとしてお腹を見ると…傷が綺麗になくなってるじゃないか!

「ふふふ、やっと元のあなたに戻ったわね」

キキーモラさんがくすりと笑う。きっと―――そう、きっと、
セリリさんがガラス瓶いっぱいに溜めた水を垂らしてくれたんだろう。

ボクは、王城にいた時に一回だけそのガラス瓶を見た事があったんだ。

その時にセリリさんが説明してくれたんだけど、どうやらこのガラス瓶は特別な品らしく。
特別な魔力がかかっていて、そこに何かしら液体を入れるとなんでも薬にしちゃうらみたい。

その効果故、誰かに盗まれてしまう可能性もある。だから王城の人たちは
この瓶を公に売りに出していないし、瓶の情報を街に漏らさないようにしているらしい。

そのガラス瓶を使って水を薬に変え、ボクの腹部の傷を治すのに使ってくれたんだろう。

…だとしたら、とっても強い効き目の薬なんだなぁ。
だってこんな短時間で、ボクのおなかの傷をきれいさっぱり無くしてしまうんだから。

キキーモラさん達、こんな事をしてまでボクを励まして、元気をあげようとしてくれたんだよね…。
ちょっぴりしみじみしちゃうボクの肩を、キキーモラさんがポン!と叩いた。

「ほら、せっかく皆が励ましてくれてるんだからさっさと行きなさいな!

今から貴方に作戦を話すわ。王様が本当は直々に伝えてくださる予定だったんだけれど、
今は前線のサポートをしているからダメだって。

いい?よく聞くのよ、アルル。この作戦が成功するかはあなたにかかってる。
…一回しか言わないからね、頼んだわよ」

キキーモラさんの真剣な瞳に気圧されて、ボクはこわごわとうなずいた。

「………うん」



「それじゃ行ってきます、キキーモラさん、セリリさん、ハーピーさん、フェーリさん!
今まで、どうもありがとう!」

そういってボクは、皆に大きく手を振る。
一回深呼吸をした後、ガラスで出来たトンネルを飛び降りた。

下にはまだ冷たい濃霧が延々と広がっている。
ずっとずっと続く霧の海を潜っていくように、ボクは下へ降りて行った。

でも大丈夫。きっとこのずっとずっと下には彼がいてくれるはず…。

別れる前、キキーモラさんに言われた事をよく思い出しながら、ボクは霧の中
体のバランスを崩さないようにと落ちた時の体勢のまま霧を突き抜けて言った。


しばらく落ちていくと。

霧が一気に晴れ、ボクを一瞬無重力に投げ出されたような感覚が襲って。
一瞬チカリとめまいがした後、ボクは一気に空中に投げだされた。

「う…うわあああぁぁぁぁぁっ!?」

思わず体のバランスを崩し、直立に近い体勢だったボクの体は
ぐいぃっ!っと横向けになって、空と地面がぐるぐると交互にボクの目に飛び込んできた。

混乱するボクに確認できる事。

空は…さっきの宇宙空間とは打って変わって、歪な色をした虹が
何重にもかかっている不気味な空に、何十個もランタンが浮かんでいる。

地面は…一面真っ黒だ。所々ひび割れている大きな一本道のようになってて、
何かアーチのようなものが見える。

ボクはその景色をゆっくり見る間もなく必死に体勢を立て直そうと踏ん張った。

でもそうするたびに体はあっちに転げ、こっちに転げ…。
空中で何度も回転して…ダメだ、だんだん目が回り始めた。

空気は変わらず冷たくて、ボクの耳元を風がひゅーひゅー唸ってる。
いよいよボクは目を回して、四肢を放りだした。

大の字になって、仰向けで空をぐんぐん降りていってく(降りてってる…はず)。
背中に酷く風が吹きつけていて、それが―――素直に痛かった。

でも、その風が吹き付けるのも突然に終わった。

―――――トスン!

下降は終わり、ボクを何かが包みこむ。温かい何かが。
どうやらボクは地面に落ちたわけじゃないらしい…一つ目の作戦は成功したみたいだ。

いつの間にかつむっていた瞼をゆっくりとあけた。
そこにいたのは…

立派な角を持った、大きな大きな牛男。

彼にもボクは驚かなかった―――もちろん、キキーモラさんから話を聞いていなければ
とってもびっくりしただろうけど。

ボクが楽にいられるように体勢を整えてくれてから、そっとボクをおろしてくれる。
それから彼は、優しい声でボクに話しかけてくれた。

「っ、と…大丈夫、ですかな?」

「はい!ありがとうございます」

ボクの返事を聞いて、ちょっぴり気弱そうな彼の隻眼がほっと力を緩めた。
…どうやら、大きな図体に対して、中身はとっても優しい人(?)みたいだ…。


「さてと、それじゃあ早めに出発しますかな。ここももう直危なくなる
…赤の司祭から、話は聞いたか?」

ボクは彼の言葉にうなずいた。

なぜ彼がこの国の司祭の事を知っているのか。なぜかと言えば―――
それはもちろん、彼もまた司祭だから。

彼の名前は、ミノタウロス。「黄の司祭」だ。


なんでもミノタウロスは、ボクが王城の人に助けてもらった時から
ラグナス王に伝達を受けていたらしい。『主を探す』旅の途中だった彼が城へ戻った時、
ちょうどエコロからの手紙が王城に届いたときらしくて。
(彼曰く、この国はとっても広くて国中を回ったみたいだけどまだ『主』さんは見つからないみたい)

そのあと彼は今までの事すべてを聞かされ、
ボクのためにもここまで駆けつけてきてくれたらしい。


ボクとミノタウロスは、並んで真っ黒な道を走りだした。
地上には冷たい霧がかかっていて、さっきほどまでとはいかないけれど視界が悪い。

さっき上空からボクが見えたもの。それは薔薇の彫刻が施され、
紫の宝石が埋め込まれた大きなアーチだった。

それらをいくつかくぐりぬけ尚、ボクらは走りをやめない。

どこまでいってもまっすぐな道。霧。アーチ。同じ景色。皆に励ましてもらったし、
あんまり弱音を吐きたくはないけれど、ボクはいったいどこまで走ればいいんだろう…?

「…ところで、」

ミノタウロスさんに話しかけられた。ボクが彼の事を横眼で見ると、
同じくボクの事を見ていた(のかな?)彼と目が合う。

ミノタウロスさんはすこし照れくさそうにはにかんだ後、
すっと目を再び前方に動かし言葉を続けた。

「赤の司祭たちから話は聞いているか?」

「うん、バッチリね」

ボクも目線を前に持ってきて、握りこぶしに力を込めた。

ボクがキキーモラさんから聞いた話―――というか、一つの作戦。

先ほどのボクとアリアの戦いによって、ガラスの大広間はすっかり崩れ去ってしまった。
でも、実はその下にはもう一つ通り道があった。それが、今ボクがいる通路だ。

王様たち一行は、ボクがジュゲムを唱えたその直後に広間にたどり着いたらしい。
だけどその広間は崩れて、王様たちが落ちてった下にこの通路があったみたいで。

その後、爆風も収まらないうちに黒い衣装をまとった少女―――
アリアがこの歪な空を突っ切って言ったらしく。

恐らくアリアは今この通路の最深部にいる。そう考えたラグナス王は安全地帯を確保し、
(これが、キキーモラさん達のいたトンネルだった)自分たちは通路の奥を目指した。

でも途中で、アリアの手下だと思われる少女たちが邪魔していて、
ここは通らせまいと通路をまた壊そうとしているらしい。

それを阻止するために、王城の人たちや魔導学校の皆…それにエコロ達も
通路の先で戦っているらしい。

ボクはこれからそこへ向かう。皆がアリアの手下たちの攻撃を食い止めている間に、
ボクが間を縫ってアリアの元へ向かおうという話だ。

無論、攻撃はボクの下にもやってくるだろう―――
その時は、自分で身を守れとキキーモラさんから言われた。

今ボクはそこへ向かってるんだ…今更ながら、緊張してきた。

ミノタウロスさんと一緒にいるとはいえ、アリアの手下たちの攻撃がいつ来るかもわからない。
何せこの薄ぼんやりしてる視界だもん。いつまで走ればいいのかもわからないのに。

「…これではさすがに不安だろう」

ふと、ミノタウロスさんが走りを止めた。ボクもあわててブレーキをかけるけど、
前につんのめった。やばい、ちゃんとバランスとらないと…!

あわてて後ろに重心をかけると今度は後ろに倒れこむ姿勢になって―――

「おっと!」

またミノタウロスさんに支えられる…えへへ、何度もごめんなさい。
ミノタウロスさんはボクを左腕にもたれさせながら、右手に持つ斧を振り上げた。

「まったく、危なっかしいな…この霧は俺に任せろ!」

ミノタウロスさんが力強く斧を振ると、辺りに立ち込めていた霧が一気に晴れた。
おかげで今までずっと見えづらかった前方の景色もはっきりする。

―――目の前には、道がなかった。

ボクから見て数十メートルのところから、道がすっぱりと無くなっている。
もしかして、まだ下があるの…!?

「大丈夫だ、アルル」

ミノタウロスさんが、ボクの肩に手を置く。

「ここの崖から落ちて行った先では、魔導学校の生徒や教師たちが戦っている。
友人なんだろう?さっさと行ってあげないと」

「でも、ミノタウロスさんは?」

「俺は、ラグナス王たちのいる前線へまた行き、アルルの無事を報告しないと。
もうじき向こうにいる赤の司祭たちも迎えに行かなきゃならないしな」

…そっか。ミノタウロスさんも、色々やるべき事があるんだよね。

「よーっし、ボクもやるぞーっ!!」

「ブモッ!?」

気合を入れようと、こぶしを上に突き出して精いっぱい声を出す。
…と、突然大声を出されて驚いたのか、ミノタウロスさんが目を丸くした。

一つ深呼吸をおいて、ボクは崖へ駆けだした。

「…それじゃミノタウロスさん、行ってきます!短い間だったけど、ありがとうございましたっ」

…ちょっぴり振り返って、挨拶をしていってからね。
するとミノタウロスさんはボクに手を振る―――

―――とか思ってたら、ボクの背中をむんずとつかんで!

「健闘を祈る、アルル!」

「ブモオォォォッ!!!」という掛け声とともに思いっきり投げ飛ばされた!
訳わかんないまま、ボクは空中にふわりと投げ飛ばされた後、まっさかさまに落ちていく。

「うお・・・うわああああぁぁぁっ!?」

あ、あの人…(あの牛?)…何考えてるの~~~っ!!
考えるのもむなしく、叫ぶのもまたむなしく。ものすごいスピードで崖を落ちていく。
(どこかから落ちるの、もう何回目だろう…なんか向かい風にも慣れてきた)

黒い床がぐんぐんと近づいてきてるし、今から体勢立てなおすのも難しいし…
あーっもう、どうしようーっ!

空中で体が大きく傾き、視界が180度回った時。
ボクの目に、歪な空を背景に青い閃光が飛び込んできた。

「…グラチオーゾ!」

聞き慣れた、おっとりとした女の人の声。気付けばボクの周りをいくつもの青い光が
ひゅんひゅんと飛び交って、綺麗なリボンを作り上げる。

リボンは何重にも網のように重なって、ボクを優しく受け止めてくれた。

「わっ!とっとと…」

ボクがリボンの上に受け止めた瞬間、リボンは綺麗な光の粒になって消えていった。
驚いたボクは思わず、その場にへたり込んでしまう。

「あらあら…アルルさん、大丈夫ですか?」

そんなボクに手を差し伸べてくれた人は。

藤色のカールした髪に、白いロングスカート、紺のブラウス。
ボクがいた魔導学校の頼れる先生。アコール先生だった。

ボクは先生の手を取って「よいしょ」と立ち上がる。

「せ、先生!…どうしてボクがここに落ちてくるってわかったんですか?」

そうだよ。ボクはあの大きな崖から飛び降りた。
(いやどちらかっていうと…投げられた、が正解なんだけど)

あの崖は横幅がとっても広かったはず。なのに先生はどうやって
ボクが落ちる場所を見極めて、魔法をかけられたんだろう?

「それは…先生が黄の司祭様にお願いしたからですよ。うふふ」

「…へっ!?」

せ、先生っ!?どうしてそんな事を…。

「アルルさん、今自分が立っている道を見てみるのです」

先生に言われたとおり、とりあえず辺りを見渡すと。
道幅がはるかにせまくなってるじゃないか!

さっきまでは魔導学校の皆が横一列に並んで歩いてもまだ余る余裕がありそうな廊下だったのに、
今じゃ、ボクとアコール先生が二人で並んで精いっぱい、というくらいの広さ。

道の両端には、ボクの膝の高さくらいの柵が申し訳程度にかけられていて、
そこから先は…真っ暗だった。柵から落ちた先の所だけ、穴が開いたかのように
…塗りつぶされたように真っ黒だった。

「アルルさんが自由に落ちたとして、道の外側に落ちてしまっては大変ですからね。
ですから先生は、黄の司祭様にお願いしたんです、アルルさんをここに落としてほしいと。

ビックリさせて、ごめんなさいね」

「いえ!全然そんなこと…ないですよ」

優しい先生の言葉。ほんのちょっと聞いてなかっただけなのに、
なんだかとっても懐かしくって。

ボク、なんだかんだ言って寂しかったのかもな…うん、そうだよね。

きっとボクだけが寂しがってるんじゃない。皆もさみしいはずだ。
それじゃあ、早く魔導学校のみんなにも会いに行かなくちゃ。

「…先生!」

「はい、いきましょう」

ボクと先生は顔を見合わせて、一気に駆けだした。

視界は良好。さっきまでしつこいほどあたりを覆っていた霧が晴れた分、
ボクの目には今まで以上にいろんなものが飛び込んでくる。

歪で不気味な空の色を彩るように、たくさんのカラフルなランタンが浮かんでいる。
そしてそのランタンを縫うように、キラキラと輝く魚(?)の群れが空を泳いでいた。

…不思議な世界だ。これが、夢魔の世界なのかな…。

花が咲き乱れていた世界。言うなれば、まるで天国のような―――
アリアの友達、エリザがその世界を燃やしつくすまでは。

もしかしたら、アリアはかつて自分がたった一人の友達と過ごした世界を創り、
その空間の最奥で思い出に浸っているのかもしれない。

いずれ、ボクがそこにたどり着く。そうなれば、彼女は裁かれる。
時空の理にあらがって、新たに並行世界を守り続けていた叛逆者として。

この世界は確かに、認められていない並行世界だ。
でもそれを守り続けていたのは、大切な友達のため。

友達が作り上げた世界を、本人が力尽きた後も必死に守り続けてきた。
それは、この世界に住む人々を守るためだったのかもしれない。

エリザがずっと守っていたこの世界を、自分が崩すわけにはいかない。

もしもアリアがそう思っているのなら、
彼女はこの世界を絶対に崩したくなんかないだろう。

でもそれなら、アリアはどうしてボクが均衡を崩すようなことをしてるのに、
ギリギリまで止めたりしなかったんだろう?

きっと彼女ならボクの事をもっと早く止められただろう。

もしかしたら―――ボクがあの時不思議な夢を見なかったなら、こうやって動き出す事もなかったのに
―――アリアはわざわざボクにその夢を見せた。

その結果ボクは今、こうやってこの世界の真相を暴こうと動いて、
しまいにはついにこの世界の最深部まで来てしまっている。

でも彼女は、その場でボクを拒んだ。
ボクを襲ってけがを負わせて、自分は空間のさらに奥に逃げ込んでいる。

どうして?もしアリアにその気があるのなら、最初からあの夢を見せずに
この世界でボクらが暮らすのをのうのうと見ていてもいいのに。


…いや、きっと、大丈夫だよ。

アリアの本心はよく分からなくてまだもやもやしてる所もある。
でもボクはもうわかったんだ。

アリアが求めているもの。なぞなぞの答え。
ボクが言ってあげれば、アリアを助ける事ができる。

ボクが思うに―――アリアはきっと無理してるんだ。本当にそうかどうかはわからない。
けれどもうこの世界を守るのに疲れている事は変わらないはず。

アリアの過去を見てボクは気づいたんだもん。きっとアリアは、
自分がも求めている事も忘れて、ただ目の前の世界を守ることだけに集中してる。

その使命故に。大切な約束を守る気持ち故に。
それを教えてあげよう。最後まであきらめずに手を差し伸べてあげるんだ。

それが、今のボクにできる唯一の事。
ボクが彼女とこの世界を救うために、唯一出来る事…。


「アルルさん、落ちますよ!」

アコール先生の言葉で、ハッとした―――って、落ちるぅっ!?

目の前にはまたまた切り立った崖がある。
ボクは立ち止ろうとしたけれど、時既に遅し。

突然足元ががくんと揺れて、足を滑らせたボクは空中に思いっきり投げ出された。
でも、

「うわぁぁぁっ…わっ、とと!」

大丈夫。

今度はとっさに体勢を立て直し、ちょっぴり屈んだ姿勢のまま着地する事が出来た。
(まぁ、反動でよろけちゃったけど…)

「アルルさん、お見事ですよ」

ボクの隣にふわりと着地したアコール先生がぱちぱちと拍手してくれた。

ボクら二人で正面を向く。
道は、ミノタウロスさんといた時みたいに広めの道幅に戻っていた。

遠くの方で、爆発音が鳴り響いている。何度も何度も、煙が沸き起こっては
また別の方で。かと思ったら、煙が一気に晴れたり、また濃い煙が辺りを覆ったり。

きっと、あそこでアミティたちが戦ってるんだ。
ボクはさっと体勢を整えて、先生と再び駆けだした。

全速力で走るとすぐに、沸き起こる煙の壁にぶち当たる。
それでも濃い煙をかき分けかき分け、ふっと視界が開けるまで突き進んだ。

すると。

向こう側から走ってくる人影が見える。それはだんだん大きくなって、こっちに向かってきて…。

「…っ、アルルーっ!」

アミティが煙を分けて駆けてきた。
勢いよく走ってきたアミティに気圧されたボクは、思わず走ってくるアミティを受け止める。

「アミティ!さっきぶり、だね!」

「うん、そうだねアルル!」

そう言ってボクらは笑いあう。でもアミティは突然、ふっと顔をこわばらせた。

「…もうちょっとおしゃべりしたいけど、今はそれどころじゃないんだ。
先生!アルル!あたしについてきて!」

そう言ってアミティは、霧の向こうに駆けだした。
ボクらも見失わまいと必死に後をついていく。

しばらく走ると、濃い煙がすかっと晴れ渡った。一瞬びっくりして立ち止って、
あわてて辺りを見回してみる。

広い広い道の途中途中で、魔導学校の皆が戦ってるのが見えた。

遠くの道の真ん中では、クルークとラフィーナが背中合わせで戦っている。

クルークは、魔導書片手に次々と魔法陣を打ち上げていくし、
ラフィーナは目にもとまらないほどの速さで次々と体術を繰り広げていた。

二人が戦っている相手は…少女。4~6歳くらいの黒い衣装を着た少女たちだった。
でも、様子が変。皆がいくら攻撃を加えても、少女たちは一旦バラバラになった後すぐ復活してしまうのだ。

よく見てみると…彼女たちは、人形みたいに見えた。肌は不自然なほどにつるっとしているし、
眼はきらきらと宝石のように光り輝いている。

そして彼女たちは、表情を作らなかった。

どんな攻撃をくわえられても、彼女たちはずっと半笑いのまま反撃をしかけてきている。
本当に―――傍から見ると―――とっても不気味な光景だ。

「アレがどんどん湧いてきて困ってるの!
もうちょっと向こうの道にはリデルとシグもいるんだ。

アルル!目的の場所に向かいながらでいいんだ。向かってきた人形達だけでも
こう…がっつーん!とやっつけてくれないかな?」

「それは私が承りましょう」

おろおろと手を振るアミティを宥めるように、アコール先生が彼女の頭に手を置いた。
そして先生はその手でアミティの背中を、もう片方の手でボクの背中を力強く押した。

「!…先生…」

「この場は私が何とかしましょう。安心して。
先生なら、あの人形の足止めくらいなら簡単ですからね。

アミティさんは、アルルさんと出来る限り一緒にいてあげてください。
アルルさんも、あの人形の事は気にせず進むのですよ。

ただ、万が一という事もあります。その時は、臨機応変にやるんですよ」

ボクとアミティは、先生の言葉に強くうなずいた。
それを確認して、ちょっと安心したのか。先生はいつも通りの微笑みでボクらに言ってくれた。

「…さぁ、いってらっしゃい」

「………はいっ!」

ボクらは二人で一緒に返事をして、お互い手をつないで一気に走りだす。
途中ちらと振り向くと、先生は自身に敵が集まるよう催眠魔法をかけていた。

「アルル、ラフィーナ達にも挨拶していくよね?」

ボクは、アミティの言葉に静かにうなずいた。
だって、此処でお別れをしなきゃ…あとはもうお別れできる時間なんて無いもん。

例えこの世界が消え去らなかったとして、ボクらはもといた並行世界に帰らなきゃならない。
そしたら、此処の世界のアミティたちとは永遠にお別れ。

…それに、ここでお別れしなくちゃなんだか気持ちが締まらない気がするんだ。
これからボクは、今度こそアリアと話をつけに行く。

それによってこの世界がどうなっちゃうのかも決まってくるんだし、
心の迷いは取り去りたいんだ。

だからこそ、ボクはあの大切な友達の皆にお別れをしておかなきゃ。
それでボク自身も落ち着いて、落ち着いてアリアの元へ向かおう。

きっとこれで最後になるだろう。

ボクは、この世界の一人ぼっちの人形に逢いに行くんだ。







続く
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